(ミニ)ビブリオバトルに倣いテーマを定め「しゃべれば3分」の質量でご紹介する「本談義」
本日のテーマは、"ま、いっか "です。
『平成よっぱらい研究所』
二ノ宮知子 / 著
1996年刊行
祥伝社
4~6ページの一話完結。二ノ宮氏がみずから「よっぱらい研究所所長」と名乗り、「報告1」~「報告24」として、よっぱらい時のエピソードを逐次報告しています。が、これが、すさまじい破壊力。飲酒で痛い目にあった経験のある方にとっては「上には上がいる」といった安心&励みになるはず(それがいいのか悪いのかは別として)。
なにしろ冒頭に近い「報告2」で早速
「みなさんよくある話だと思いますが 起きたらきのうのことを憶えてませんでした」
という酒飲みの最終形態が語られます。
そして明らかになる実態がこちら。
- いつ帰ってきたのか覚えていない
- なぜ15人もの人が自分の部屋で寝ているのかわからない
- ストッキングはびりびりに破れ、手には「大売出し」ののぼりをにぎったまま寝ている
- ベランダがあけっぱなしでギターとウクレレがおいてあり、飼いネコがいなくなっている
思い出すのがこわくなった二ノ宮所長、どうしたかというと
「また寝ることにする」
「きのうのわたしはきっと楽しく幸せだったに違いない。それですますのが一番」
とノーテンキな結論に一時は達します。
しかし待ち構えているのは事実のつき合わせ作業。結果、何があったのかを逐一耳にしたとき、みなさんご存じ(?)骨身にこたえる衝撃に震えることになります。
おまけに身体のあちこちに「ガケからころがりおちたような」深い傷を負っており、「報告」のラストは「知らない間に死なないように気をつけようと思う」という「反省」で締めくくられます。
漫画家・二ノ宮知子といえば、ご存じ大ヒット作『のだめカンタービレ』の作者。当時20代半ばだった彼女が描く、酒に溺れ続けるどうしようもない日常の情けなさと、おのれの醜態を知りあまりのことにショックを受け嗚咽しながら結局は「ま、いっか」と笑い飛ばすぶっ飛び具合が爽快だったり、ヒトゴトでよかったと安堵したり。
さすがにわたしもここまで飲みすぎるようなことはなくなりましたが、かつてはこれを読んで、ここまですごいひともいるんだ、と、生きる勇気を得られたものです。
タイトルの「平成」にフォーカスしてみると、確かにこの内容は令和の時代には合わないかもしれません。とくに最近のネット社会では、迷惑をかけること、かけられることへの許容量が極端に減っていて、酒の席ですら羽目をはずすことが難しそうな気がします。
「この開放的で投げやりでバカになる時間が、人間には必要なのだとわたしは思う」
バカになる時間が許される社会であってほしい。これを読んで懐かしみながらそんな人情を思い出してもらえたら、そんなふうに思います。
さて、本日はこの「平成よっぱらい研究所」でもってオンラインでのビブリオバトルに参加させていただきました。その名も「マンガビブリオ」。滋賀県で定期開催されているものですが、オンラインのおかげで参加することができました。zoomのレクチャーもしていただけたので、知らなかった機能に気づくこともできましたし、ご参加のみなさんの熱いトークにもまれて大変充実した時間にもなりました。
会う機会のない方々と画面を通して対話できるオンラインイベントは貴重な機会。また何かしら参加させていただいたり、活用したりできたらと思っています。