今回は、おはなし会に代っておすすめしたい絵本の中から特に個人的に思い入れのある絵本を紹介する「えほんとわたし」です。
「ぶたばあちゃん」
マーガレット・ワイルド 文
ロン・ブルックス 絵
今村 葦子 訳
あすなろ書房
私的おすすめ対象年齢 8歳~大人
ぶたばあちゃんと孫むすめは
ふたりが知っている、いちばんいいやりかたで
さよならをいいあいました。
「ずっとながいあいだ、いっしょにくらしてきた」ぶたばあちゃんと孫むすめ。仕事も家事も何もかも分け合い、助け合ってきたふたりに、別れが訪れるおはなしです。
「ごらん ! 」ぶたばあちゃんはいいました。
「あんなにきらきら、木の葉がきらめくよ」
ふたりで最後の散歩に出かけると、ぶたばあちゃんは孫むすめに大切なことを伝えようとし、孫むすめはそれをしっかりと受けとめます。ふたりきりではなかったんだよ、ひとりぼっちになるのでもないよ、こんなに豊かな命たちがあなたのそばについているんだよ。ぶたばあちゃんは命の継承と共に、孫むすめにそう教えたのではないでしょうか。
細い線に水彩が優しくのった画が粛々と進むストーリーとあいまって、きらめくようにいとおしい生の営みとしての「別れ」を読み手に手渡してくれるこの作品。クラシック音楽に触れたときのような繊細な感触と沁みとおるような静かな感動がいつまでも残り、それは何度読み返しても同じように味わうことができます。
私的にはぜひ小学三年生くらいの女の子から大人女子の皆さんにじっくり味わっていただきたい絵本です。
この「ぶたばあちゃん」は、それこそ大人になってから、しかも読み聞かせや子どものためではなく、自分のために手にした最初の絵本で、手にしてからずいぶん経ちますがやはりいまだに「わたしだけのもの」という感覚があります。きっとわたしもぶたばあちゃんからすばらしく美しいものを手渡してもらえたのでしょう。
「おばあちゃん」と「孫むすめ」の結びつきというのは、案外クールなものではないでしょうか。だからこそ余計に "継承してゆくもの" の存在が大事なのではないかと感じます。
写真は結婚前に母からもらったお手製のお手玉。最近になってやっとわたしも作ってみようかなどと(ちょっとだけ)思いばらしてみたところ、小豆にまじって懐かしい数珠玉がでてきました。娘にも「おばあちゃんのお手玉」とわたしが作る(予定の)お手玉をプレゼントできたら、と思います。